~ 夢中だった最初の5年間 ~
私は大学を卒業して、23才のころからトマト作りを始めました。最初の年は師匠について、指示された事を必死でやるだけで、何のためにこうするのか、意味もわからず言われるままにやってきたというのが本当です。
トマトが病気にならないよう、10日に一回は必ず農薬を畑に散布していました。暑くても、防毒マスクにメガネ、帽子、長袖のシャツを着て、身体全体を被い、エンジンのついた噴霧器でボワーと畑全体に撒く方法です。特に怖さも感じず、店に並ぶ「見た目綺麗なトマト」作りに励んだのです。
2、3年経つとだんだん要領がわかってきて、前年より沢山トマトを収穫できるように、いろいろ工夫・挑戦してきたつもりです。
今想うと、「綺麗なトマトを沢山作る」という結果のみを気にして、それまでの作る過程、方法には目を向けていませんでした。できあがったのは、「水ぶくれで丸々とした、薬漬けのメタボトマト」です。
今考えると、“何を学んだのだろう”と思います。
~ 息子が生まれた年のトマト作り ~
そんな綺麗なトマト作りをしていた私に、考えが変わる機会が与えられました。
トマト作りを始めてちょうど5年目の春、息子が生まれたのです。
食べ物を作る私にとって、考え方が180度変わりました。
“せっかく作るんなら息子に安全なものを作って食べさせたい。息子が喜んで食べるものを作りたい。”という思いが突き上がってきたのです。
沢山あるトマトハウスの一つだけ、化学肥料も農薬もほとんど使わないで作りました。まだ、一才にならない息子に、一口でも食べさせたいと、完熟したトマトを家に持ち帰ったものです。
このときのトマトは、みんなから「とてもおいしい!!」と言われました。息子にはまだ早かったのですが、自信をもって人に勧めることができました。
2・3才となると、ちょっとずつ食べてくれました。息子には、価値はわからなかったと思います。でも親にとっては、息子の口に入るものは“本当に安全なものを”との一心でした。
まったく化学肥料や農薬を使わないで育てるためには、じっくりと苗を育てなければなりませんでした。
苗ポットの土には、水も肥料も最低限に抑えて、大切に育てました。
そうすると、水、肥料を欲して伸びていた根から力強い茎や葉ができあがり、病気にかかりそうにないトマトに育っていったのです。
“これはいい!”と思って根気強く育てていたら、これまで作ってきたトマトとみると、倍の日にちが過ぎてしまいました。
ようやく花が実となったときには、期待に反して実の大きさは半分と、とても小さく、茎先のほうはどんどん細くなり、一本のトマトから採れた量は、普通の三分の一以下でした。
いくら良いことでも、これではやっていけない。そのため、息子が小学校に通うようになるまでの7年間は、最低でも子供に食べさせるトマトと、出荷するトマトは別々に栽培したものです。
この話を聞いたあなたは怒っていますか?「やっぱり」と思いますか?
“幼い息子が食べるトマト”、“誰が食べるのかわからないトマト”で、人間はこれほど変わるのです。恐ろしいでしょう。でも本当のことです。
~ 息子が小学生になった ~
息子が小学校に通うようになると、何でも食べるようになりました。休みになると「回転寿司いくか?飛騨高山ラーメンにするか?」子供の機嫌をとるように、出かけるのが楽しみになってきました。
学校給食が好きで、なんでも残さず食べているようで、給食はすごく安心して食べられるものだと、なんとなく信じていました。栄養は学校任せになり、トマトの消毒も“安全に使っていれば”と特別気にならなくなってきました。
しかし今になって、学校給食安全神話も崩れる事件が起き、驚いています。
中国餃子に農薬が混入した事件で、学校給食の仕入れがストップしたという話。
大量に安い食品が、安全性より優先されて学校給食に当たり前のように使われているのですね。
もちろん、今、子育ての真っ最中のお母さんやお父さんは私以上に、ビックリだと思います。
学校給食は、1食300円程度で作られています。金額から考えると、地産地消(地元で採れるものを地元で消費する)も無理なら、オール国産なんて夢のまた夢なのが現実なのですね。
当時の私は、息子が小学校、中学校、高校と進むにつれ、食の安全性より、しっかり食べて大きく育って欲しいと思っていました。
そんな気持ちで生活していると、トマト作りさえも「基準さえ守ればいいさ」「農家は大変なのだから、少しは消費者も我慢して欲しい」「有機、有機なんていっても、やっぱり生活がなりたたなければ、話にならない。売上がものをいう。」いわゆる日本の農家の常識で、トマト作りを考えるようになってしまいました。
そこには”生まれたばかりの子供を育てる親の心”はなくなってしまっていたのです。
今もお店に出回っているトマトは、みんなそうなんです。
売れるトマトであればいい。あなたが買わなくても、誰かが買ってくれればいいのです。
「国の示す安全基準の範囲内であれば、安全なんだ」と農家は自分に言い聞かせながら、安全より売上を目指して、作りつづけているのです。
~ 最高級トマトの味 ~
日本でもっとも高い、おいしいトマトを食べてみようと、東京に出かけました。
世田谷の小田急線成城学園前駅を降りると、最も高級な食材が並ぶといわれる店がありました。その駅前の成城石井と駅ビルの食料品売り場で買い物をしました。
うわさどおり、1パック500円近くするトマトがずらりと並んでいました。
とにかく全種類買って、東京に住む息子の部屋に持ち帰り、片っ端から食べてみることにしました。
ところが、正直言って、どれを食べても「こんなもん!?」という感じでした。
意外な事ですが、市場で、「特別おいしい」と言われる有名なトマトでさえ、「特別おいしい」と思えないのです。
作る人はおいしいトマトを作ろうとしているのに、お店に並ぶとたいしたことがない。
“やはり完熟前に出荷されているからなのだろう”そう確信しながら東京から戻ってきました。
~ トマト市場の反応 ~
東京から帰った私は、“自分で試すしかない”と思い、翌年、農協出荷の桃太郎のほかに、赤や黄色、オレンジの完熟トマトを試験栽培することにしました。
完熟させてしまうと、農協集荷できないことはわかっていたのですが、どうしても作って見たかったのです。
5月にまいた種が、育ち実をつけ、8月になってようやく真っ赤や黄色に色づきはじめました。
待ちきれなくて、色づいてきたトマトを早速食べてみたが、あまりおいしくない。まだ早すぎたのです。
それから3日くらい待って畑にいくと、中まで鮮やかな赤色に染まり、それなりにおいしくなっていました。
とりあえず、市内のスーパーのバイヤーを畑に呼んで試食してもらいました。
結果は、「フルーツのような味がないと高い値段では売れない」と言われ、取り扱ってはもらえませんでした。
特別、フルーツのようなトマトを作るつもりはなかったのですが、完熟の価値がわかってもらえなくて、やっぱりスーパーは無理なのかとちょっとガックリしました。
せっかく育てたトマトだからと、10件くらいの知り合いにお中元がわりに宅配で送ってみましたが、送り先は限られており、1週間もすると、畑で完熟したトマトが、過熟となり割れ始めました。
こうなるとクズ同然です。
しかたなく母に、大なべで何杯も完熟トマトジュースを作ってもらい、ペットボトルに入れて、冷蔵保存しました。
ところが、殺菌施設がないので、雑菌が入って発酵し、蓋を開けたら、部屋中にジュースが飛び散って悲惨なことになってしまいました。
次々と色づくトマトをなんとか市場に出したいと、東京の市場にも直接宅配で送ってみたけど、結果は「フルーツのような甘みもないから高くは売れない」というものだった・・・実は“熟しすぎて、流通できない”というのが本音だったのでしょう。。。。。
そんな日々の中でも、トマトは毎日完熟していき、“やっぱり畑で完熟させては、売れないのだ”と真っ赤になったトマトの畑をぼう然と眺めたものです。
「これが現実なんだ。仕方ない・・・・。残りのトマトは、完熟する前に収穫して、市場に送ろう。味は落ちても、売れなければもうそうするしかない」と完熟トマトのおいしさを届ける事に、あきらめを感じていました。
~ 完熟トマトはやっぱりおいしい ~
8月下旬に息子が里帰りした際、写真を撮ってくれました。
愛用のカメラを持って一緒に畑に出向き、畑で作業をする私や、色づきたわわに生(な)ったトマトをカメラに収めた息子が、「ひとつ食べてもいいか?」と聞いてきました。
私は「もちろん。好きなやつ、いくつでも食べていいよ。」と即座に答えると、息子は、真っ赤に熟したトマトを手にとって、ガブリとかぶりついた。
一口食べると、「売ってるトマトとぜーんぜん違う。売ってるトマトは、ナーンか変にトマト臭くて嫌いやけど、これは、旨い!トマトじゃないみたいや。」と満足そうに口にしてくれていました。・・・嬉しかった。
“味の違い”がわかるんや。
専門に扱うスーパーのバイヤーや市場の人間より、子どもの味覚を信用しよう。
畑を、ぼう然と眺めた時の気持ちはすっかり消えてしまい、光が見えた気がしました。
~ 一日で届ける宅配しかない! ~
ここで諦めたら、意味がない。
息子の“旨い!”の言葉を思い返しながら、完熟トマトの味と風味を、そのまま自分の手で届けられる「完熟トマトの宅配をしよう!!」と心に決めました。
宅配なら、箱詰めしたら、翌日にはお客様のところに届けられる事に気がついたのです。
発送の準備をしながら親戚、知人、友人、そのまた友人に頼んで買ってもらう事ができました。
ようやく、完熟トマトを一日でお客様の手に届ける事ができ、手ごたえを感じました。
そうしたら、買っていただいたお客様の声が寄せられ、これもまた、私の力となったのです。
いくつか原文のまま紹介させていただきます。
- 「トマト届きました!!!! 残念ながら私は出張中のため食べられませんが、家族が電話の向こうで「美味しい!」を連発していました。届いた箱を開けて、その場でふいて食べてます。」
新潟県 mashさんより - 「トマト届きました。どうもありがとうございました!いろんな種類のトマトがあるのですね・・・家族みんな大喜びで 思わず ガブリと食べてしまいました(笑)とても甘くて・・・いつも食べているトマトとはぜんぜん違い 感動です!有難うございました。」
神奈川県 にこにこパンダさんより - 「トマト食べました。大変甘味を感じ、食感も良かったです。特にオレンジの中玉がめずらしいです。これから収穫大変ですが、頑張ってください」
岐阜県 レッドパールさんより
まだまだお客さんが少ないので、畑で完熟してしまい、捨てなければならないものもあり、残念に思う事も沢山ありましたが、息子の言葉に光を見て、お客様の声に力づけられ、“もうやめない!”“諦めない!”と心に誓っている私がいました。
私の家族は、現在70歳をすぎた父と母、2つ年下の妻、そして大学生の息子の5人家族です。
毎日の食事や世話をしてくれる母、人工透析を続ける父、仕事の支えになってくれる妻や息子、昨年から応援していただいているトマトオーナーの皆さん。
そんな仲間と一緒に楽しくトマト作りをしている私です。
なぜそんなに楽しいかって?
遠く離れた家族や友人に会える時ってとても“楽しみ”になりますよね。
買って頂けるあなたを友人と信じ、あなたの為のトマトを作る。
そんな“待ちこがれる”気持ちでトマトを作っているからです。
そんなトマトはきっと“待ち焦がれた魔法”にかかったようにあなたに喜んでもらえると思います。
さあ、あなたも幸せな家族を守っていくための食品選びをしてください。
あなたとあなたの家族の健康のために!
「畑で完熟したトマトを一日で届ける」
この挑戦に是非ご協力いただきたいのです。
「みせかけ完熟トマト」はいらない。
一度、ほんとうの完熟トマトを体感したいと思われても、信頼して提供してくれる農家は簡単に見つけられるものではありません。
同様に、農家の私たちにとっては、いくら完熟したトマトを届けようと頑張っても、お客様に出会うことはとても難しいのです。
お互いのために「畑で完熟したトマトを一日で届ける」この挑戦に是非ご協力いただきたいのです。






